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So, I'll take your hand and..
yarn:moor
So, I'll take your hand and..
2009.05.15
CD
CXCA-1251
¥2000 (without tax)
1. warm, sweet and freeze / あたたかくて、優しくて、つめたいもの
2. it's blooming / はじまり
3. 1014
4. one cold day / さむい日
5. after time in the forest / あのあと、あの森で
6. pool of the sun / 雨のあしあと
7. snuffed at spring breeze today / 春のにおい
8. ephemera / エフェメラ
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村尾泰郎氏によるアルバム解説:

 エレクトロ、ダブ、ヒップホップ……スタジオを実験室(あるいは遊び場)にしたサウンド・クラフトは、終わらない夏休みの宿題みたいにアーティストを絶えず刺激してきた。そうしたアプローチを自在に使いこなす新世代のアーティストが増えてきたなかで、今年1月にファースト・アルバム『dubious』を発表したMANTISは、スミス&マイティのロブ・スミスに絶賛され、ジ・オーブの来日公演では前座を務めるなど、日本のダブ・シーンが注目する期待の新星として登場した。そして、このMANTISの中心人物のモス(サウンドプロデュース)と、彼と共にTiltloose Recordsを主宰するネウマ(プログラミング)が06年からスタートさせたのがyarn:moor(ヤーン・ムーア)だ。その後、imaginionのメンバーとしても活動しているタオがヴォーカルとして参加して、現在のトリオ編成に落ち着いた。

 彼らのクロスオーヴァーなサウンドを説明するには、MANTISのアルバム・タイトルがヒントになるだろう。〈dubious〉は〈曖昧な〉という意味を持っているが、ストレートなダブではなく、さまざまな音楽的手法をミックスしながら、そのどれでもない曖昧な領域をダブワイズするのがMANTISの音楽術だ。yarn:moorのサウンドもまた〈dubious〉な匂いがするが、MANTISと比べて、独自の叙情性を漂わせているのが新たな魅力だろう。ディープなダブと繊細なエレクトロニカが出会って生まれる、「あたたかくて、優しくて、つめたい」音響空間。「あのあと、あの森で」「雨のあしあと」「春のにおい」など、曲名からも柔らかなリリシズムがこぼれ落ちる。

 例えば「1014」で〈東京湾〉という言葉が出てきた時、ふと思い出したのが40キロに渡って東京湾を横切っている海底谷のことだった。東京湾には深さ1000メートルにもおよぶ巨大な海底谷が横断していて、そこには鮫が住んでいることを初めて知った時は東京湾が異世界のように感じられた。yarn:moorのサウンドに身を浸していると、そんな深い海の底に広がる〈もうひとつの世界〉へと案内されているような静かな興奮がある。濃密でありながら透明。その漂うような歌の風情に、どこかフィッシュマンズのカケラを感じさせつつ、このファースト・アルバム『So, I'll take your hand and..』で彼らは新しい音楽地図を広げて見せてくれた。さあ、冒険の旅の始まりだ。


村尾泰郎

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