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Euphoriam
kazumasa hashimoto
Euphoriam
2007.12.14
CD
CXCA-1222
¥2381 (without tax)
1. Count My Sheep
2. Lonesome Girl
3. Euphoriam
4. Velvet 36
5. Londo
6. Vagrantones
7. Ballad
8. White Butterflies
9. Endless
10. Perhaps I Never Meet You
11. Goodbye Miss Wiggie
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村尾泰郎氏によるアルバム解説:

 kazumasa hashimotoの音楽を説明する時、どうしても〈エレクトロニカ〉という言葉を使いがちだ。なんだかちょっと違うんだよなあ、と腑に落ちないまま、なんとなく。電子音楽の新しいカタチとして、〈エレクトロニカ〉という言葉は21世紀の音楽シーンで幅広く使われることになった。そのサウンドのイメージは、テクノと呼ぶには繊細で、オーガニックな響きを持つエレクトロニック・ミュージック、そんなところだろうか。たしかにkazumasa hashimotoの音楽にはそういった要素もあるけれど、同時にもっと普遍でおおらかな響きに満たされている。彼は5歳の頃からピアノを弾き始めたらしいが、そうしたクラシック音楽の素養が、時として印象派のような柔らかなアンビエンスを醸し出しているのかもしれない。kazumasa hashimotoの音楽は新しくて、なんだか懐かしい。 

 そんなkazumasa hashimotoの最新作のタイトルは『Euphoriam』と名付けられた。おそらく〈Euphoria(幸福感)〉をもとにした派生語か、あるいは造語だろう。彼のアルバム・タイトルは、いつも不思議な言葉で聴き手の想像力を刺激してくれる。そして、さらにイマジネイティヴなのは、いうまでもなくそのサウンドだ。本作ではイントロダクションともいえるオープニング曲「Count My Sheep」をきっかけに、ゆっくりと夢の世界へと降りて行くよう。アコースティック・ギターの音色が印象的な「Lonesome Girl」はシンガー・ソングライターっぽい雰囲気のナンバーだが、本作はいつも以上に〈歌〉の魅力に溢れている。kazumasa hashimotoの創り出す微睡むようなサウンドスケープのなかを、蝶のようにひらひらと舞う男女ヴォーカル。なかでも「Londo」でフラジャイルな歌声を聴かせてくれるのはGutevolkの西山豊乃で、kazumasa hashimotoのピアノと西山の歌声が微笑みながらロンドを踊ってる。

 それにしても、全編を包むこのユートピアめいたシンフォニーは一体どこからやってくるのだろう。エレクトロニカという言葉では表現しきれない無垢なサイケデリア。シューゲイザーの轟音の向こうに垣間見える、音も空間もすべてが溶け合った無重力世界に近い感触もある。ラスト・ナンバー「Goodbye Miss Wiggie」を聴き終えたあと、身体に残るは美しい夢から目覚めたときのような気怠い幸福感だ。思えば最初に『Euphoriam』というタイトルを聞いた時、発音が近い〈ユーフォニウム〉という楽器のことを思い浮かべた。もしかしたら『Euphoriam』とは、幸福を奏でる楽器なのかもしれない。そして、そんな楽器を操れるミュージシャンは、kazumasa hashimotoをおいてほかにはいないのだ。

村尾泰郎(Yasuo Murao)

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