土井玄臣
針のない画鋲

2018年3月9日発売
¥2,000(税抜)

1. みえないひかり
2. ハート
3. 日々
4. 謎
5. やさしいピリオド
6. 終点はあの娘の家
7. そこにてる
8. マリーゴールド

【nobleオンラインショップ限定特典】
アルバム未収録音源2曲のダウンロードコード付きポストカード

ご購入はこちらから

Comments


土井さんのアルバムはいつも優しい。夜の街の隅、埃にまみれた物語の裏側、どんなに汚くても、どれだけ救いがないように思えても、どんなものにカメラを向けても、土井さんの歌には出口があり、遠くに光が漏れている。まるで物語の中の彼や彼女にそれらを指し示すように、そしてその祈りのような行為が僕たちの日常にも作用するように、いつだって土井さんの手には魔法のかけらのようなものがかすかに息をするように存在する。

そんな中でも「針のない画鋲」はいつもに増してとても優しい。「んんん」から始まり(それはもしかしたら終わりなのかもしれないけれど)、「The Illuminated Nightingale」で夜中をくるりくるりと回りながら旋回し、「ぼんやりベイビー」でまた地上4cmのとこのを浮かびながら歩いてきた主人公らの物語はそこで、柔らかな光に包まれているように見える。優しいメロディと歌声によって。

福富優樹

Homecomings

きれいなんだけど生々しい
寂しいんだけど寂しくない
弱いんだけど弱くない
暗いんだけど光が届く

そんな音楽。すごいと思う。

マエノソノマサキ

8otto
Muddy Apes


Listen




Watch

土井玄臣「そこにてる」MV
監督・撮影・編集・出演:土井玄臣

Self Liner Notes



地味なアルバムだと思う、コメントいただいた方にも申し訳なく思うくらいに
書くことも難しかったんじゃないだろうか、今の私がそうみたいに
解説を書こうと何度もチャレンジし、書き出してはこ難しい言い回しから始めてしまい
そのたび途中から何書いてるのやら分からなくてなってきては消し、を繰り返してるうちに
締め切り当日を迎えてまだ何も書けていない

今回は何のコンセプトもなく、前に作った曲が4曲と新たにこさえたのが4曲でちょうど半々
あと強いて言えば歌物で統一してるくらいか
何書いていいか分からなくなってきたので、自分の思うところをとつとつとつぶやくように書いてみる
ここ何年か人混みにの中に行くのがなんとなくやだなぁと億劫になることが多い
人の悪意みたいなものを感じてすぐやられてしまう
今勤務先が市内のど真ん中なんでなかなかそれを避けて通れない
だから出来るだけ周りの物事を見ないように心を閉ざしながら生活する
電車の中だったり信号待ちの時だったりエレベーターの中だったり、いたるところで
どんなに心を閉ざしても何かがぬるぬる伝染してきてなんだか無関心のふりしてそれを乗り切ってるつもりでも
自分がいつのまにか忌み嫌ってるはずの嫌な奴に成り下がってたりする
最近自問自答する、おれこんな嫌な奴だったっけ?そうだったかも、そうだったっけ?
通勤ラッシュの車内で中央コンコースを縦横無尽に行き交う中で
なんだかみんなが苛立って憎しみ合ってるみたいに感じることがある
前からこんな感じだったっけか、自分がアホだったから最近まで気づかなかったのか
数年前から何かがおかしくなってきてる気がする

2005年ごろに出版された考古学というか民俗学というか東京の土地について書かれた本を最近読んだ
暗い題材も多く取り上げてるのに読後無邪気な印象を受けた
そこには否応でも比べてしまう一つの経験があるかないかの違いだと思った
2011年3月11日の東日本大震災はやっぱり大きく物事の感じ方を変えてしまった
思考する上でその前と後は行き交うことのできない亀裂があるように見える
ベタな物言いだけど

前置きが長くなったけど、今回のアルバムの新しく作った4曲と前からの4曲の間にはこの亀裂があって
古い曲も歌詞は一部書き直してたりするので分かり難くなってるけど
それでも古い4曲は無邪気な苦悩というかドラマのようなところがある
新録の4曲にはどことなしに暴力の気配がある、これって自分しか思わないのかもだけど
見えなかったり自虐に向かったりするそんな類の臭いのように忍び込んでくる気配だけがある暴力
どの4曲が新しくてどの4曲が古いのかはあえて書かないでおこうと思う
自分でも何書いてるか分かんなくなってきたぞ、数日後読み直してげんなりする自分を想像してる
でももう書き直す時間もない
夜勤から帰ってきて寝ずに書いて朝の11時になろうとしてる
ここまで読んだ奇特な方はもうアルバム買うっきゃない
んで自分なりの何かを感じてもらえればこれ幸いです

最後に1曲だけ解説っぽいの書いておこう
始めの「みえないひかり」という曲について
呪いについて曲を、というか歌詞を書いてみようと思った
差別的な発言をする人、それを肯定する風潮がじわじわ浸透してきてる
やだなあって思うけど、そういう人ってなんでそんな考えを持ち合わせるようになったのか
答えも夢もおかしな方向になって、それでも愛とか恋とかは誰とも変わらず矛盾もしないのか、とか
なんかそんなことを思いながら、そんな人に光が当たるとしたらって考えた
だからこんな歌詞を書いた
「答えはない 夢も 抱きしめるものも 触れると枯れる花を抱えていた
 臆病な風がいつも吹付ける どこまで逃げても ここにひかりが届く」

でもやっぱり、その光は見えないんだ


土井玄臣